事業承継ビジネスの実態②
【銀行は何故、事業承継・M&Aビジネスに力を入れるのか?】(1)
私は銀行で10年間、中小企業の事業承継サポートをしてまいりました。
何故、銀行が事業承継サポートをするのか?それは95%、融資をするためです。以前在籍した、銀行の営業推進部での出来事です。銀行全体で融資量の確保に苦戦していた月でした。当時の執行役員推進部長が我々に対し、『事業承継はどうなっとるんか?』と、大きな声を上げました。私は何を言っているのか、全くわからなかったんですが、少しして気づきました。この部長は、我々に事業承継提案でその月に融資できないのか?と、言っているんですね。事業承継が融資獲得の手段としてしか、考えられていないんです。
また、このような事もありました。ある営業本部の会議の時に、本部長である専務が同じような事を私に言ってきました。現在は組織再編税制を活用すれば、クライアントに税負担かけることなく、融資も発生せずに事業承継対策できるケースがかなり増えてきているんですね。だから、事業承継対策をすれば、融資ができるということはない・・・と反論しました。専務さんには意味がわからなかったかも知れません。そういう経営陣のもと、事業承継を推進されるのは、クライアントを軽視している証拠でしょう。事業承継は営業推進すべきではありません。私が銀行を51歳で退職した理由の一つです。銀行では本当の事業承継サポートはできないんです。
現在、九州・沖縄・山口で2016年度の休廃業件数は約2100件、倒産件数が約700件。この背景として事業承継問題があると思われます。地域経済にとって、大変重要な問題であり、これに真剣に向き合わないと金融機関も生き残れないのに、多くの金融機関は考え方が本末転倒していると思います。
前回、書きましたが、事業承継とは大変な作業です。アドバイザーとのリレーションが重要ですし、5年10年かかる作業なんです。常にクライアントファーストで経営者に寄り添える会社でありたいと思います。