今週の提言(2月24日号)
今週の提言(2月24日号)
「株を渡す順番」を間違えると、会社は壊れる
―― 事業承継は“人”より先に“資本”を整えよ
事業承継の話になると、多くの社長はこう言います。
「後継者は決まっています」
「息子に継がせる予定です」
ここで話が止まってしまうケースが非常に多い。
しかし私は、あえて申し上げます。
後継者が決まっていても、承継が成功するとは限りません。
なぜか。
会社は「代表者」だけで動いているわけではないからです。
会社を本当に動かしているのは、
株主構成=資本の構造です。
これを軽視したまま株を移してしまうと、
後から取り返しのつかない事態になります。
例えば――
・議決権が分散し、意思決定が止まる
・兄弟間で株を持ち合い、経営権が不安定になる
・少数株主が存在し、再編やM&Aが進まない
・相続のたびに株が細分化していく
現場で何度も見てきました。
人の問題ではなく、構造の問題で会社が止まる瞬間を。
事業承継で本当に怖いのは、
「揉めること」ではありません。
もっと怖いのは、
誰も悪くないのに、会社が動かなくなることです。
ここで重要なのは、
「誰に渡すか」よりも先に、
どういう形で渡すかを設計することです。
たとえば、
・議決権を集中させるのか
・種類株式を活用するのか
・持株会社化を検討するのか
・一部を外部に開くのか
これらはすべて、
“後継者を守るための準備”です。
承継は、人のバトンタッチではありません。
経営権の設計図を書き換える作業です。
特に中小企業では、
株主構成と経営権がほぼイコールです。
ここを曖昧にしたまま承継を進めることは、
地盤を固めずに建て替え工事をするようなものです。
さらに申し上げれば、
株主構成の整理は、
将来のM&Aや組織再編、資金調達にも直結します。
株が整理されていない会社は、
外部から見たときに「扱いにくい会社」です。
どれだけ良い事業をしていても、
資本が整っていなければ、評価は下がります。
つまり、
株の渡し方は、未来の成長可能性を決める作業でもあるのです。
今、改めて考えてみてください。
・現在の株主構成を正確に把握していますか
・議決権は誰が握っていますか
・将来、再編や売却を検討する際に障害はありませんか
もし即答できないのであれば、
それは「危機」ではなく、
整えるべき余地があるというサインです。
事業承継は、感情ではなく設計です。
そして設計には、時間が必要です。
次回は、
「組織再編は大企業の話ではない」
――持株会社化や会社分割が、中小企業にこそ必要な理由を掘り下げます。

